オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッド・アイ Tの猫とその一味第37話「ポーター犬の冬の仕事」

冬の間、ポーター犬はどう過ごしたら良いだろう。本来の職場北岳山域は深い雪に閉ざされて山小屋も閉まるから戻りようもない。出張先のここ関川村でも光兎山に冬登る人は稀である。自分の稼ぎで作った、犬にしては立派な家(43,500円)で、無聊なまま安...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第36話「このいのちなにをあくせく②」

大概の犬は飼い主に媚びて生きている。それは飼われた犬の宿命だろうが、その点クマは媚びる態度は皆無だ。吠えこそすれ、歓迎する様は一度も見たことはない。絡まった綱を解こうとして手を噛まれることは度々、注射をする獣医師さえ噛もうとする。もしかする...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第35話「人間には無理です」の巻

ポーター犬の九月の稼ぎは一万六千円だった。土日が八日間に祝日二日、その内二日は雨だったので8日分の日当である。11月半ば、霙が降る頃まで働いてもらって、その金で大工さんに犬小屋を作ってもらうのはどうだろう。石間家の玄関で吹雪に晒されては可哀...
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オッド・アイTの猫とその一味第34話「膨らんだ餅を見よ」

そんなわけで週末になると(晴れていれば)私は午前七時に石山家からポーター犬を車に乗せて光兎山中束登山口まで連れて行き、登山ポストの杭に繋いでから出勤する。帰りは6時に迎えに行き、袋の中身の稼ぎを確認してから石山家に送り届ける。光兎山は登り三...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第33話「ポーター犬その後」

肉球ラーメンで活力を増し、温泉と川魚三昧で軟弱になったYは結果プラスマイナス0で、10月のマラソンに向けて練習している。綿野舞さんも同様だから、見た目に大沢小屋逗留の影響はない。ただこのまま練習を続けても制限時間内に完走できるかどうか、微妙...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第32話「勧誘と清掃」

 店主は肉球を「にっきゅう」と発音する。日給を「にちきゅう」と言わず「にっきゅう」と言い、白球を「はくきゅう」と言わずに「はっきゅう」と言うからには「にっきゅう」いうのが発音しやすい変化(音便)だが、熱気球を「ねっききゅう」と言わずに「ねつ...
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オッドアイ・ Tの猫とその一味第31話「肉球ラーメンの秘密2」

察しの良い読者であれば猫探偵がラーメン屋がらみであることにお気づきのはずだ。下関駅前もここも。そのラーメン屋を拠点として何かしらの普及活動(世界の猫化など)をしているのでは、と御推測のはずだ。代金を法外に廉くして、誘い水とするのは悪徳商法や...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第30話「肉球ラーメンの秘密」

休館日の月曜は昼間バドミントンをした後ドームで走り、それから坂町に食料品を買いに行く。食品を買う前に同じ建物の中にあるラーメン屋に寄って遅い昼食にするのがこの頃の例だ。午後三時頃、客が来ない時間帯なのか主人はいつもカウンターの一番奥の席で壁...
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オッド・アイTの猫とその一味 第29話「そして夏が来る」

深沢のYはしがないか菓子工場で働くしがない女工である。社長も含めて100人いる工員の中の百番目だ。女工の仕事は機械から吐き出されるいもり型のビスケットを手早く12個入りの箱に詰めること。遅ければ叱られるし、ひとつ多くても少なくても計量のブザ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第28話「探偵の報酬②飯豊猪命の会」

以前5月の末に光兎山のヒメサユリを見る登山を公民館事業としてやったことがあったが、この時は何輪も咲いてなくて、おまけに天気予報も外れて参加者には申し訳なかった。もちろん下見もしているが、バスをお願いしていることもあるし参加者の都合もあるから...