オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッド・アイ Tの猫とその一味 第十五話「ぐしゃぐしゃの白線の巻」

私の駄弁に相手は必要ないから、人に迷惑を掛けないのが長所だ。自分の体力を相手に自己完結すれば良い。ドームで走り始めてしばらくすると親に送られてきた小学生たちが野球を始める。だんだんとその数が増え、大人のコーチ達も混じり始めると整列し練習が始...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第十四話「不十分で十分の巻」

廃校となって久しい女川小学校にまだ二宮尊徳像はあるのか、私は敢えて見に行くことにした。健全な状態で今も存在するなら、預かっている首は戻す必要はないし、首が無いのなら、私が左官を真似て本来の姿にしなければならない。というのも、一日に何度も収蔵...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 十三話「カラスの乾物」

時計を持たない犬は時間の感覚が希薄なのだろう、Tの散歩は夏だと6時過ぎ、日の短くなりつつあるこの頃は5時前後なのに、大概は2時間も3時間も前からTが登場する方向を向いて待っている。時計が無いから遅いとか早いとか文句も言わないし、頓着もない。...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第十二話「うたかたの優勝」

猫に戻りたい理由の付け足しです。先般お話したように猫人生に屈託は皆無です。ですから一日が長い。今仕方なく人間生活をしていますが、人間のひと月分が猫の一日です。ですから猫の十年は人間の三百年です。僕は早く猫に戻って三百年のんびりしたいです。貴...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第十一話「鼻黒猫の偽スキップの巻」

高級葡萄の最後の一粒が私の口に運ばれる頃、私は一つの推論をまとめ上げた。名前と容姿からして宮尾宮子は鼻黒猫の化身だろう。化身ができるなら葡萄を買うぐらいの金の工面は容易だろう。社長になっても良し、銀行員に化けるのも簡単だ。ただ、原付でしか移...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第10話「宮尾宮子」

それよりも尊徳の頭を封じ込める方が先決なのだ。エアキャップで包んでから段ボールに入れ、それをできる限りガムテープでぐるぐる巻きにして、そこに 「ドライブ ドロップ チャンスでスマッシュ 流れる星の速さで打つから 願いを掛ける時間はない...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第九回「両手も回せない」

 例の猪が例の襟巻をして前を歩いている。気に入って巻いているのだろうか。それとも一味の証みたいなものだろうか。猪に毛の襟巻はいかにも暑苦しいので 「それは君、仲間で流行の襟巻か」と聞いてみた。 「欲しいのか、欲しければやるぞ」 ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第八回「変で良い襟巻」

会場の体育館に着いて準備をしようとすると、靴を忘れたことに気づいた。更衣室に戻って探したが見つからない。一緒に来た人たちはもう卓球台で球を打ち合い、試合前の練習をしている。裸足でもいいかと思いながらもバッグをもう一度探すと衣類の下に尊徳があ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第七回「冬は休む」

第六回最後の部分と重複、直し。 「ミッキーみたいに一ヵ所しか出ないといいのに」とつぶやいた。 これからこの山小屋が火事になってD6さんと征平さんが登場してと、私は予言者のように巫女に教えようかと思ったが、小屋に居るのは私一人、慌てて...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第6回「言い訳ばかりが年をくった」

残念ながらここで夢は覚めた。もう一度夢に戻って猪を詰問したかったが、有耶無耶のまま眠ったようだ。続きを見たかもしれないが、一旦覚めて途切れた後の夢は恣意的だ。 「君はまるきり猪の姿態だけれど、中身は強欲な人間のようだね。煩悩の人だ」 ...