オッドアイ・Tの猫とその一味

オッドアイ・Tの猫とその一味

オッドアイTの猫とその一味第72話「観音菩薩坐像」

 今週父の一周忌があります。仏壇を掃除していたら観音菩薩像を倒してしまい、右の手首が折れてしまいました。アロンアルフアを買ってきて、くっつけていると、左も欠落していることに気づきました。いつ折れたのか分かりませんが、仏壇とその周辺を探しても...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第71話「郵便体操」

 猪の体は衝撃に強い構造になっているのか、岩場から転げ落ちるとすぐ藪を漕ぎ始めた。二匹目も転げ落ちてやはり藪を潜って進み始めた。最初から藪を漕ぐべきだったかもしれない。私は猪の落ちた辺りを慎重に登って御秘所の上に立った。御前坂の九十九折をバ...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第70話「縦走はとてもとても」

週末のためか、本山から下ってくる多くの人とすれ違った。切合小屋に泊まったという人もいるし、本山小屋に泊まったという人もいるが、犬と猪と人間のパーティは珍しいので、最後尾を行く私に質問した。 「猪と犬とは喧嘩はしませんか」 「今まではしま...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第69話「元々脈は無いかも」

報告③ズボンに毛が付くので私も猫棒を作りました。最初は配達する人のように単なる棒でしたが、振り回していると手が疲れるので、棒の先に台車に付けるような小さな車輪をひとつ付け、更に二枚の板を合わせて貼って三角になるような先端を作りました。つまり...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第68話「猫棒」

看板の下には鼻黒と猪とが好奇心を募らせて集まってきた。しかし、一様にがっくりと肩を落とした。看板の下にぶら下がった値段表には「飲み放題食べ放題。但しヒメサユリの球根5個也」と書かれていたからだ。そこに大きな袋を担いでY似で猪使いの巫女が来た...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第67話「松ほどでもない」

順番に運ばれてくる水を沸かしてアルファー米の入った袋に注いでいく。 「何がいいですか。五目ですか赤飯ですかピラフですか山菜おこわですか」  そうしているとマダムが小屋から出てきて私を呼んだ。 「20分経ったら食べてください...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第66話「三国小屋地形図松竹梅の巻」

  小屋の壁はすべて地形図で覆われていた。天井も隙間無く地形図が貼られ、さながらモダンアートである。しかも一枚二枚の厚さでなく何枚も重ねて貼ってあるので、紙自体が壁の役割をしているようだ。ただ、私の地形図が貼られたのは最近のはずだから、仔細...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第65話「ドクタードントウォーリイ」

そのぐるぐる巻きの猿ぐつわの管理人を解放すれば事情はすぐに分かるのであろうが、どうもその男の人相が良くない。そう思って躊躇して、建物の陰から彼の様子を窺っていると、猿轡が自ずとハラリと解けて、大声で叫ぶのかと思いきや、自分でまた縛り直したの...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第64話「種蒔山から」

九月は初めに二泊三日の北岳山行、そして不帰、八峰を越える後ろ立山三泊の縦走、それから湯沢のハーフマラソンと続いて、草を刈る余裕はなかった。雨が降らず作物が育たないと聞くのに、盆前に刈った家の周りの草だけが青々とし繁茂していくのを、半ば感心し...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ T の猫とその一味第63話「飯豊連峰備忘録」

これは前に書いたかもしれないし書かなかったかもしれない。それほどこの小説は長いものになってきたし、もっと長いものになるだろう。忘れたって構わないし、忘れることも大事だ。だから飯豊連峰の概要を昔書いた文章で紹介する時間を頂くこととしよう。 ...