オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッド・アイ Tの猫とその一味 第23話(改稿)

(少し改めました。) 私はとにかく無事に、できれば一刻でも早く広河原に着いてくれと祈るような気持ちでいた。バスが止まって、後ろのドアが開いた。停留所の看板を見ると「鷲ノ住山」と書いてある。昔、ここでバスを降りて沢伝いに間ノ岳、そして北...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第23話「行きたい場所に花は咲く」

私はとにかく無事に、できれば一刻でも早く広河原に着いてくれと祈るような気持ちでいた。バスが止まって、後ろのドアが開いた。停留所の看板を見ると「鷲ノ住山」と書いてある。昔、ここでバスを降りて沢伝いに間ノ岳、そして北岳に登ったことを思い出し、誰...
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オッド・アイTの猫とその一味 第22話「頗る前衛的~ホウオウシャジン」

「どうでもいいけどどうでもよくないドーナツ襟巻、夏はクールで暑さ知らず冬はホットで寒さ知らず、いざ呼べ奇跡のドーナツ襟巻さあきた魔法のドーナツ襟巻、マスクバンダナ天使の輪、気分を出して踊ろうよ」 その時の歌を思い出したのか、あるいは創...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第21話「ありふれたパラドックス」

私を呼ぶ父の大きな声がして階段を降りると、茶の間に人が集まっている。介護会議の面々のようだが、すっかり忘れていた。それに、施設にいるはずの父がなぜ戻っているのかも思い出せない。回復して家に帰ることになり、これからの対応を検討する集まりであっ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第20話「教訓の無い人生を歩みなさい」(改稿)

雪の上に猫の足跡が残っている。家と作業所と車庫と納屋を取り巻いて何本かの複数の足跡が雪の降った朝できている。足跡から猫の色を判別することはできないので、何匹通ったかは分からない。猫は建物に沿って歩き、所々に大便を残していく。猫が主に歩く軒の...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第20話「教訓の無い人生を歩みなさい」

雪の上に猫の足跡が残っている。家と作業所と車庫と納屋を取り巻いて何本かの複数の足跡が雪の降った朝できている。足跡から猫の色を判別することはできないので、何匹通ったかは分からない。猫は建物に沿って歩き、所々に大便を残していく。猫が主に歩く軒の...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第19話「このいのちなにをあくせく」の巻

色だけを変えながら、その後も私は裸でもじゃもじゃ頭で靴だけ履いた姿で描かれた。時々帽子を被ったりタオルを巻いたりしてアピールしたが、変化はない。写実性に疎く、先入観だけの絵を私は毎日見せられた。 ~11月21日きょうはふったりやんだり...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第18話「日記係の企み」

本当に用があるような人は来る様子がないので、私は結局朝と晩と尻尾を引っ張って、大体以上のような会話をした。犬が毛布で寝転んでいれば私は犬と犬小屋の中の鼻黒猫の間にしばししゃがみこんで話をした。  ある時鼻黒猫が言った。 「私を日記係にし...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第17話「使わないのなら貸してください」

陰鬱なこの時期に冬囲いをしなくてはならない。どうしてもしなければならないことだから、切羽詰まらないうちにしたいと思っていても、天気が良い、休みの日でないとできないからどうしても遅くなりがちだ。初雪を見て慌てたり霙に打たれながらは例年のことだ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第16話「空のせいで陰鬱」

 行く先々で鼻黒猫と出会うのは妙だとふと思った私は、談合坂を登り切った所で車を降りた。そして杉の木の間からグラウンドを俯瞰すると、相変わらず余念ない様子で白線引きを押す鼻黒猫が見えた。鼻黒猫の後ろにはもう二人、順番を待つように歩いている。多...