オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッド・アイTの猫とその一味第47話「新しい仲間ホリディ」

雪の中の郵便夫は雪が解けるまで見つからない。そんな犠牲が無くては七月が来なくて、ヒメサユリも咲かないのだろう。そんな気がした。 私は朳差岳に登りながら振り返り振り返りして、小屋をあとにするY似で猪使いの巫女を見送った。もしかすると、と...
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オッド・アイTの猫とその一味第46話「水場の秘密」の巻

前世も現世も不十分に思われた猪であったが、水汲みに行こうとする私に進んでついてきた。つまり、逃亡すれば単なる猪となり、Y似で猪使いの巫女の捕獲の対象となるが、ここにいる限り蟹券とその命を交換した猪であるから安全は保障されていると、充分でない...
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オッド・アイTの猫とその一味 第45話「蟹券発行の顛末」の巻

「この蟹券と猪を交換したいと思います」 そう言って鼻黒医師は朳差岳の標柱の上にカニコウモリの葉を置いた。それは濡れていて四角い標柱の先端に張りついた。多分新鮮さを保つために途中の水場で濡らしてきたのだろう。 「カニというのは骨が...
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オッド・アイTの猫とその一味第44話「飯豊連峰保安局員」の巻

長者平に咲くヒメサユリも少なくなった。水汲みの合間に時々足を運んだが、いくつも見られなかった。それも猪の仕業だと思うと、やはり全面的に同情する気にはなれない。猪の腹に手を置き、その振動に同調しても気持ちまでは同調できなかったというわけだ。そ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第43話「蟹券の誘惑」の巻

人生は夢の中で夢を見ているようなものなので何が起きても不思議ではない。人はただそれを追認するだけだ。だからずっと7月の朳差にある日Y似の猪使いで巫女が登場しても驚かない方が良い。 「私らは毎日こんなにぶらぶらして人間らしいことをしない...
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オッド・アイTの猫とその一味 第42話「二つの続報」の巻

それから数日後、鼻を黄色くしたバケーションが持ってきてくれた手紙にはこう書いていた。 私の中にはいつも7月の飯豊がある。吹雪の中の除雪の時も、除雪機が何度も詰まってうんざりする時もありますが、そんなこと全てが7月の飯豊の稜線を歩く私に...
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オッド・アイTの猫とその一味第41話「束の間の7月」

頂上から北には関川村を見下ろすことができる。そこで私の本物が私の良く知る日常を送っている。 目を転じて小屋側を見れば、飯豊の山々の連なりが見える。一番奥に飯豊本山、そして烏帽子、梅花皮、北俣、地神・・・おや、また登山者が来たようだ。 ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第40話「ずっと7月」

鉾立峰から小屋までは指呼の間だが、登山者は道草をしてすぐには小屋に着かなかった。 「あれ、道を逸れて草むらに入りましたね。ニッコウキスゲの花の中を歩いています」 「縦横無尽に歩き回っています。ニッコウキスゲが沢山倒れますね」 ...
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オッド・アイTの猫とその一味第39話「日記係の交替」

1日5往復、大した労役には思えなかったが、サンダルであるのと、水を汲むのに以外と時間が掛かかるので、一回1時間では終わらないことが分かった。水場は浅くて大五郎の4ℓ容器がすっぽりと入らない。だから500のペットボトルで汲んで大五郎の細い口か...
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オッド・アイTの猫とその一味 第38話「鼻黒医師の言い分」

猫と鼻黒猫とポーター犬と、それを取り巻く人間たちの報告をこの頃怠っていた。もちろん報告は義務ではないが、私自身の認識、確認のためだ。それだけの意味しかない。 報告が滞った理由は喉の痛み。10月の下旬、正確には26日急に喉が痛くなって、...