オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッド・アイ Tの猫とその一味第67話「松ほどでもない」

順番に運ばれてくる水を沸かしてアルファー米の入った袋に注いでいく。 「何がいいですか。五目ですか赤飯ですかピラフですか山菜おこわですか」  そうしているとマダムが小屋から出てきて私を呼んだ。 「20分経ったら食べてください...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第66話「三国小屋地形図松竹梅の巻」

  小屋の壁はすべて地形図で覆われていた。天井も隙間無く地形図が貼られ、さながらモダンアートである。しかも一枚二枚の厚さでなく何枚も重ねて貼ってあるので、紙自体が壁の役割をしているようだ。ただ、私の地形図が貼られたのは最近のはずだから、仔細...
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オッド・アイTの猫とその一味第65話「ドクタードントウォーリイ」

そのぐるぐる巻きの猿ぐつわの管理人を解放すれば事情はすぐに分かるのであろうが、どうもその男の人相が良くない。そう思って躊躇して、建物の陰から彼の様子を窺っていると、猿轡が自ずとハラリと解けて、大声で叫ぶのかと思いきや、自分でまた縛り直したの...
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オッド・アイTの猫とその一味第64話「種蒔山から」

九月は初めに二泊三日の北岳山行、そして不帰、八峰を越える後ろ立山三泊の縦走、それから湯沢のハーフマラソンと続いて、草を刈る余裕はなかった。雨が降らず作物が育たないと聞くのに、盆前に刈った家の周りの草だけが青々とし繁茂していくのを、半ば感心し...
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オッド・アイ T の猫とその一味第63話「飯豊連峰備忘録」

これは前に書いたかもしれないし書かなかったかもしれない。それほどこの小説は長いものになってきたし、もっと長いものになるだろう。忘れたって構わないし、忘れることも大事だ。だから飯豊連峰の概要を昔書いた文章で紹介する時間を頂くこととしよう。 ...
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オッド・アイTの猫とその一味第62話「風の便りは紙飛行機」

書いたかどうか忘れだが、夕方私はその日の出来事をノートに記し、その頁を切り取ってから近くのピークに行き、風の中にその紙切れを放つ。風が北西に吹くならひらひらひらりと舞いながら飛んでいくし、無風に近ければ紙飛行機にして家の方に放つ。一枚の文書...
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オッド・アイTの猫とその一味第61話「ゆり根と蟹と」

それにしても猪に何があったのだろうか。この二日のことだけれど、あれだけ従順に柴を担いでいた猪が、滑落して戻ってくると豹変している。通りがかった者全員にゆり根を食わせて眠らせて、お陰で半日を無駄にした、などとつらつら考えると、猫のことを思い出...
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オッド・アイTの猫とその一味第60話「贋猪の企み」

全てが愚劣だ、とそう思えなくもない。生きている限り何もかも素敵だと思うこともある。死ぬまで生きる定めにあって、どちらが楽でどちらが合理的なのか。悔いて悔い切れない後悔だけが生き長らえる代償なのか。答えはハクサンフウロを揺らす稜線の風に聞こう...
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オッド・アイTの猫とその一味第59話「御秘所の試練と姥権現」

御前坂の九十九折りの道を下って御秘所に差し掛かった。猪には手が無いので岩場の下りは最も不向きだ。手のように見えて前足というように、手ではないから物を握ることはできない。だから鎖を頼らず下りるしかない。足の裏だって滑り止めになる肉球の部分は少...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第58話「姫子の峰が分岐点」

雪に埋もれた郵便夫を掘り出して助け、頼母木小屋に担いで運んでから、韋駄天走りで足ノ松尾根を下って一路寺泊の蟹を目指したY似で猪使いの巫女であったが、姫子の峰で休んでいた鼻黒猫に話しかけられて立ち止まった。 「私なんかは専門の郵便夫では...