オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第18話「日記係の企み」 本当に用があるような人は来る様子がないので、私は結局朝と晩と尻尾を引っ張って、大体以上のような会話をした。犬が毛布で寝転んでいれば私は犬と犬小屋の中の鼻黒猫の間にしばししゃがみこんで話をした。 ある時鼻黒猫が言った。 「私を日記係にし... 2022.01.30 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第17話「使わないのなら貸してください」 陰鬱なこの時期に冬囲いをしなくてはならない。どうしてもしなければならないことだから、切羽詰まらないうちにしたいと思っていても、天気が良い、休みの日でないとできないからどうしても遅くなりがちだ。初雪を見て慌てたり霙に打たれながらは例年のことだ... 2022.01.19 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味第16話「空のせいで陰鬱」 行く先々で鼻黒猫と出会うのは妙だとふと思った私は、談合坂を登り切った所で車を降りた。そして杉の木の間からグラウンドを俯瞰すると、相変わらず余念ない様子で白線引きを押す鼻黒猫が見えた。鼻黒猫の後ろにはもう二人、順番を待つように歩いている。多... 2021.12.26 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第十五話「ぐしゃぐしゃの白線の巻」 私の駄弁に相手は必要ないから、人に迷惑を掛けないのが長所だ。自分の体力を相手に自己完結すれば良い。ドームで走り始めてしばらくすると親に送られてきた小学生たちが野球を始める。だんだんとその数が増え、大人のコーチ達も混じり始めると整列し練習が始... 2021.12.17 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第十四話「不十分で十分の巻」 廃校となって久しい女川小学校にまだ二宮尊徳像はあるのか、私は敢えて見に行くことにした。健全な状態で今も存在するなら、預かっている首は戻す必要はないし、首が無いのなら、私が左官を真似て本来の姿にしなければならない。というのも、一日に何度も収蔵... 2021.11.24 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 十三話「カラスの乾物」 時計を持たない犬は時間の感覚が希薄なのだろう、Tの散歩は夏だと6時過ぎ、日の短くなりつつあるこの頃は5時前後なのに、大概は2時間も3時間も前からTが登場する方向を向いて待っている。時計が無いから遅いとか早いとか文句も言わないし、頓着もない。... 2021.11.07 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第十二話「うたかたの優勝」 猫に戻りたい理由の付け足しです。先般お話したように猫人生に屈託は皆無です。ですから一日が長い。今仕方なく人間生活をしていますが、人間のひと月分が猫の一日です。ですから猫の十年は人間の三百年です。僕は早く猫に戻って三百年のんびりしたいです。貴... 2021.10.26 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第十一話「鼻黒猫の偽スキップの巻」 高級葡萄の最後の一粒が私の口に運ばれる頃、私は一つの推論をまとめ上げた。名前と容姿からして宮尾宮子は鼻黒猫の化身だろう。化身ができるなら葡萄を買うぐらいの金の工面は容易だろう。社長になっても良し、銀行員に化けるのも簡単だ。ただ、原付でしか移... 2021.10.20 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第10話「宮尾宮子」 それよりも尊徳の頭を封じ込める方が先決なのだ。エアキャップで包んでから段ボールに入れ、それをできる限りガムテープでぐるぐる巻きにして、そこに 「ドライブ ドロップ チャンスでスマッシュ 流れる星の速さで打つから 願いを掛ける時間はない... 2021.10.09 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッド・アイ Tの猫とその一味 第九回「両手も回せない」 例の猪が例の襟巻をして前を歩いている。気に入って巻いているのだろうか。それとも一味の証みたいなものだろうか。猪に毛の襟巻はいかにも暑苦しいので 「それは君、仲間で流行の襟巻か」と聞いてみた。 「欲しいのか、欲しければやるぞ」 ... 2021.09.19 オッドアイ・Tの猫とその一味