オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッドアイ・Tの猫とその一味第56話「その背からは察し得なかった」

猪の頭の毛が風と陽で乾き、我々の髪が汗でしとどに濡れた昼頃、御西小屋に到着した。登山が目的ならここに荷を置いて大日岳を往復するだろうが、我々は飯豊連峰最高峰を指さしただけだ。振り返ると、烏帽子、梅花皮、北股岳と今日歩いた山々が重なって連なり...
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オッド・アイ Tの猫とその一味 第55話「御手洗ノ池」

烏帽子岳は2017m、次の御西は2012m、二つの山頂に標高差は無いが、その間には地図では分からない大小のこぶが続いているのが見えている。そのこぶを登ったり下りたり、稜線といっても御西岳まで三時間は掛かるだろう。Y似で猪使いの巫女は左右の叢...
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オッド・アイTの猫とその一味第54話「焚き木を拾いながら」

起伏する稜線を覆う草原と残雪、そこに刻まれた一本の細い登山道を進む一行   。私は距離を詰めて一人ひとりを確認した。先頭はオレンジのシャツ、棒を振り回すのはY似で猪使いの巫女。次に猪、その後に郵便夫、それから猪、そして郵便夫。つまり猪が増え...
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オッド・アイTの猫とその一味第53話「能天気が一番」

私はY似で猪使いの巫女を起こさないように、静かに、そして速やかに五人分の朝食を準備した。猪が串刺しの丸焼きになって、Y似で猪使いの巫女の朝食となるのを避けるためである。食事といってもお湯を沸かしてアルファー米(乾燥した米)の入った袋に入れる...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第52話「梅花皮小屋にて」

北股からの下りこそ軽率な輩は要注意である。左は急な崖になっていて、べろっとしていれば容易に滑落する。奈落の底のように見える石転びの雪渓まで落ちて、そこから今度は45度の斜度の雪渓を転がり落ちる。石転びの出会いに憚る大石にぶつかってバウンドし...
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オッド・アイTの猫とその一味第51話「もっこりの秘密」

門内小屋の二階の窓から双眼鏡で我々を見ている者がいたが、近づくといなくなった。小屋の重い扉を開いた時に、玄関に立って迎えたのはその男だ。   「門内小屋にようこそ」 首から双眼鏡をぶら下げた男は言った。飯豊の小屋の管理人の...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第50話「歌を歌えば」

重荷だったスコップがなくなったせいか、あるいは花輪が頗る気に入ったのか、ホリデーはいい気になってずんずん歩いた。関川村の方言でこういう状態を「いさる」という。いさって鼻が私の足にぶつかる時もあるので、次の休憩の時にザックからスリング(短いロ...
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オッド・アイTの猫とその一味第49話「素敵な首飾り」

管理人とはおそらくK氏だろう。郵便夫が話す風貌と一致する。「山遊亀」の著者で、阿賀北総ての三角点を詳らかに踏査した山屋だ。そのK氏に郵便夫は置手紙を書いた。 「おせわになりました。たくさんたべました。たくさんねました。とてもげんきにな...
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オッド・アイTの猫とその一味第48話「旅は道連れ」

朳差という桃源郷で唯一不足なことは風呂がないことだ。一生涯風呂に入らず、最も不潔と思われたホリデイは水汲みの度に水場に落ちるので、むしろ最も衛生的だ。ホリデイ以外、七月とはいえ冷たい水場に進んで入ることは無理だ。だから驟雨が来た時に小屋の中...
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オッド・アイTの猫とその一味第47話「新しい仲間ホリディ」

雪の中の郵便夫は雪が解けるまで見つからない。そんな犠牲が無くては七月が来なくて、ヒメサユリも咲かないのだろう。そんな気がした。 私は朳差岳に登りながら振り返り振り返りして、小屋をあとにするY似で猪使いの巫女を見送った。もしかすると、と...