オッドアイTの猫とその一味第100-2話「折り返し地点」

人生の折り返しはとうに過ぎて、時々ゴールさえ見えてこようという年齢だけれど、精神的には右往左往、歩く道さえ定まらず、ペースさえ掴めないマラソンの5㌔辺り。自分自身も含め、気に掛けてくれる人がいる限り棄権はできない。そんな気持ちで遠いゴールを目指す。百話がゴールだと考えていたが、生きている限り夢は見る。その夢の話だから、ゴールに見えたのが折り返しだったとしても不思議ではないし、夢でなくてもそういうことは人生に多々ある。折り返すと、ここまで走りながら見てきた風景を逆に見ることになる。逆とはなにか、考えながら戻っていこう。
だぶだぶの猫達が小屋の中を移動すれば、それは自ずとモップ掛けになり、そこにはだぶだぶ猫の毛だけが残る。その毛を、返信を待つ以外に仕事の無い鼻黒郵便夫が箒と塵取りを持って掃いていく。夕立が来て、だぶだぶ猫のシャンプーをするのも鼻黒郵便夫の仕事だ。だぶだぶ猫を包んだ泡を夕立が洗い流した後、だぶだぶ猫が自分で移動すると腹にまた泥が付くので、鼻黒郵便夫はぐるぐると十回位もだぶだぶ猫を回してから夕日の当たる小屋の西側の草地にだぶだぶ猫を干す。そして日本海に陽が落ちて、回収するのを鼻黒郵便夫が忘れると、自分で小屋に戻ってくるだぶだぶ猫もいるし、そのまま草の上で寝続けるだぶだぶ猫もいる。一晩中草の上で寝ると、朝露でぐっしょりと濡れて、朝それを見つけた鼻黒郵便夫はやはりぐるぐると十回位回してから草の上に戻す。今度は朝陽がだぶだぶ猫の毛を乾かす。こうて三日か四日経った朝、鼻黒郵便夫がだぶだぶ猫を裏返しにして乾かしている時に前述の返信を彼に渡した。待たせた詫びとだぶだぶ猫の洗濯代とを加算してカニ券を六枚渡した。私は鼻黒郵便夫が鉾立峰を登っていくのを朳差岳から見て、もっとゆっくり時間を掛けて手紙を書けば良かったと思った。