T学芸員も私も大きな声を出すほど2億円に驚き、その行方に関心を持った。そして、その日から三色毛皮婦人が来なくなったところまでが前回の話である。
「会場使用料が1%としても200万円です」と言ってT学芸員はまた声を上げて驚いた。当館の年間入館料の数倍になるからだ。2億円と200万円、あるいは2,000万円に飽きもせず一週間驚いてから、私は猫猫探偵社支店を訪ねたのだ。
「年中三色の毛皮を着ていますね。そう、年のころなら五十前後」「なるほどなるほど分かりました。そけでは前金で二千ニャン、結果に応じてあと三千ニャンいただきます」私は前金二千円をカウンター越しに店主に渡した。
「ところで以前ご依頼のあった金目銀目の件ですが、見つかりましたよ」
何年も前の話なので私は「ええ!」と驚いた。
「どうしますか、見るだけにしますか、それとも連れていきますか」「どこにいましたか」「坂町の駅の待合室でトマトジュースを飲んでいました。本当はコーンポタージュが一番好きなことが分かっていたので簡単に捕まえられました」「今どこにいますか」「そこで食器を洗ってます」「半猫ですか」「そうです。半猫です。探偵見習なので、見習い半猫に三色毛皮婦人を探して連れていけば一石二鳥ですね。そうしましょうか」「いえ、三色毛皮婦人は居場所と素性を調べてもらえば結構です。それから金目銀目は猫でないとだめなので、半猫の金目銀目は要らないです。どうぞラーメン屋と探偵の見習いを続けさせてください」
実は金目銀目の事を頼んでから何年もたったので、なぜ頼んだのかさえも思い出せなかった。だからそれが猫であろうと半猫であろうと関係なかったのだ。ただ半猫金目銀目の容姿だけは見たいと思ったが、それは数日後に彼の来館で叶うことになる。