百人の鼻黒郵便夫に託された百通の手紙に重要な物は無かったので、急ぎの物も無かった。けれども一週間もしないうちに百人の鼻黒郵便夫は小屋を去り下山した。中には手紙を落とす鼻黒もいる。手紙には宛先も差出人も書いてないので、最初に通れかかった郵便夫が拾い、届けることになっている。だから四通も拾って五通届くケースがある。開封すると、四通は私が書いた手紙だ。急がない手紙なので、また封をして次の日の郵便夫に託す。手紙を落とした鼻黒は自分が郵便夫であることも忘れてバイクに乗り、自分の家に帰ってしまう。これは郵便夫として不適格なので、自然と郵便夫向きの鼻黒が郵便夫を続けることになるが、その郵便夫でさえ二往復四通の内一通落とすので、大事な要件、急な要件は手紙では出せないのである。もし、足ノ松や東俣で表にも裏にも何も書いていない手紙を封筒を見つけたら、それはそのままにしておいてください。通り掛かった鼻黒郵便夫が、まるでそこにあるのが分かっていたように拾って鞄に入れ、その際もともと入っていた大事でも急ぎでもない手紙を落として気付かないのです。これは「オトシブミ」のようです。中の幼虫を気に掛ける人はいません。
「そちらは常にひめさゆりとかたかねなでしことか咲いて結構のようですが、こちらはやっと春が来たと思ったら初夏です。父の晩年、母の介護が生活の中心になった頃に植えた芍薬が今年も咲きました。いつもだと草刈機でその株の茎の一二本を切ってしまうのですが、今年は周りの草を手で抜いてから草刈機で刈ったので、きれいに株だけ残せました。母が倒れて米作りを止め、苗を育てたビニールハウスも必要なくなったので、その場所にわずかなトマトとかきゅうりとかナスを作りました。畑仕事が大好きだった母親に聞きながら育てたのだと思います。その傍ら、道沿いに植えたのが芍薬で、父が元気な時は列を成して咲いていたはずですが、今は三株だけ。しかし赤とエンジとピンクとそれぞれ色が違います。≪つづく≫
オッドアイTの猫とその一味復路97「百人の郵便夫が百通の手紙を運ぶ」≪未≫
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