オッドアイTの猫とその一味第92話「その後の餌係」

二通目の手紙
コロニャン禍で多くの猫が死んでいまい、その猫を埋葬する仕事で成金となったTは今や体を壊して施設に入っています。自分で増やした猫を処分して金を得ることは意図したことではなかったにせよ、自業自得の構図であり、病になったのは、その因果が心にもたらした自責が以前の酒浸りの生活に彼を引き戻したのかもしれません。しかし、激減したとは言え、Tの猫が全くいなくなったという訳ではありません。生き残った少数の猫が相変わらず暇そうに徘徊しています。その猫達に食事を与えているのは郵便夫です。私の家に配達物があっても無くても、郵便夫はバイクに乗って土日であろうと祝日であろうと、晴雨に関わらず朝と夕方やってきて、食べ物を皿の中に入れていきます。だから本物の郵便夫ではないかもしれません。本物だとしても鼻黒郵便協会から特命を受けて配置されたものでしょう。ただ、彼は知らないでしょう。彼の置いていく食べ物は生き残りのTの猫が食べた後にカラスが食べ、暗くなると狸、時にはハクビシンが食べていることを。そのために皿とその周りは朝郵便夫が来る頃にはさっぱりきれいになっているのです。餌を盛った皿は猫と狸とハクビシンの舌で常にツルツルです。こんな噂を聞き、臭いを嗅ぎつけて、もし熊が来たとすると、その量には全く満足しないで、猫を襲い、カラスを襲い、狸とハクビシンと穴熊も食べて、最後は鼻黒郵便も襲うでしょう。そんな凄惨な結末にならないよう、床に就く前にはピッケルを持って巡回しています。ただもう今年も12月になり、雪も何度も降り、さすがに出る幕ではないと感じているのか、彼らの出没を伝える広報無線放送も少なくなりました。ちなみに確かな筋の情報に拠ると今秋村内で駆除した熊は200頭以上だそうです。熊だらけで、ブナ、ナラの実が少なければ里に出るのは仕方ないことでしょう。