オッドアイTの猫とその一味第87話「アートブックダイエット」後半の①

小屋から出てきた亀川さんは私に二枚の紙を渡した。一枚は預かり証で「人間一体(毛)。生き返ったらすぐ下山して医者に診てもらうこと。生き返らなかった寝袋として当山小屋で使用」。もう一つは手紙であった。
「学芸員の彼女が素っ頓狂な声を出して私に見せたスマホには例の婦人の写真が載っていました。その記事の概要は美術書は人間の脳に刺激を与え、一日眺めていれば、大変活性化し、水一本で日中を過すとすなわち利口になり体重は減る。入会金10万円、1キログラム減量毎に1万円追加料金、習慣減量なのでリバウンド無し、会場は人気の無い資料館とあり、私とT学芸員もスタッフとして写真が載っていた。
「いつ写されたんでしょう、髪がぼさぼさです」
「吹雪の日もあったからね」
「ざっと計算してみたら、2千万円くらい儲けてます。だから会場使用料をもらいましょう」
「2千万て?」
「入会金10万掛ける一人平均10キロ痩せて10万円、延べ人数が1,000人です」
私は電卓を出して「2億円じゃないか」と声を上げた。
ところがその日から三色毛皮婦人だけは姿を見せなくなったのです。そして一週間後、私は下関駅前のラーメン屋、猫猫探偵社と坂町のラーメン屋、猫猫探偵社支店を訪ねて、三色毛皮婦人の行方を探しました。