オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第71話「郵便体操」

 猪の体は衝撃に強い構造になっているのか、岩場から転げ落ちるとすぐ藪を漕ぎ始めた。二匹目も転げ落ちてやはり藪を潜って進み始めた。最初から藪を漕ぐべきだったかもしれない。私は猪の落ちた辺りを慎重に登って御秘所の上に立った。御前坂の九十九折をバ...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第70話「縦走はとてもとても」

週末のためか、本山から下ってくる多くの人とすれ違った。切合小屋に泊まったという人もいるし、本山小屋に泊まったという人もいるが、犬と猪と人間のパーティは珍しいので、最後尾を行く私に質問した。 「猪と犬とは喧嘩はしませんか」 「今まではしま...
2024山行

五頭山 2024/1/14

二年振りの冬の五頭。昨年一月は天気に恵まれず、二月以降は私の父の事で計画が立てられなかった。それでも五頭は青空を木々の梢に反射して冬の美しさを変わらず見せてくれた。山は変わらない。私も変わらないから距離は縮まらず、見上げるだけだ。5:50関...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第69話「元々脈は無いかも」

報告③ズボンに毛が付くので私も猫棒を作りました。最初は配達する人のように単なる棒でしたが、振り回していると手が疲れるので、棒の先に台車に付けるような小さな車輪をひとつ付け、更に二枚の板を合わせて貼って三角になるような先端を作りました。つまり...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第68話「猫棒」

看板の下には鼻黒と猪とが好奇心を募らせて集まってきた。しかし、一様にがっくりと肩を落とした。看板の下にぶら下がった値段表には「飲み放題食べ放題。但しヒメサユリの球根5個也」と書かれていたからだ。そこに大きな袋を担いでY似で猪使いの巫女が来た...
2023山行

高原山(釈迦岳・鶏頂山) 2023/12/3-4

天気の良い関東の山へ行く時候となった。長いトンネルの向こう、群馬がより近くて良いのだが、行きつくした感がある。妙義は残っているが、表も裏も連れには無理だろう。栃木の高原山は一等三角点、展望の山とある。「天気が良ければ富士山も見える」は好展望...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第67話「松ほどでもない」

順番に運ばれてくる水を沸かしてアルファー米の入った袋に注いでいく。 「何がいいですか。五目ですか赤飯ですかピラフですか山菜おこわですか」  そうしているとマダムが小屋から出てきて私を呼んだ。 「20分経ったら食べてください...
2023山行

車山 (忘年登山)2023/11/18-19

昨年の7月に北八ヶ岳を2泊3日で訪れた際は、初日に霧ヶ峰を歩いた。ただ八島ヶ原湿原まで往復して車山の登りに掛かった時に激しい雨となり、頂上の展望は一切無かった。ずぶ濡れで車に戻って宿に入ったのであった。今回はその車山と美ヶ原を計画したが、初...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第66話「三国小屋地形図松竹梅の巻」

  小屋の壁はすべて地形図で覆われていた。天井も隙間無く地形図が貼られ、さながらモダンアートである。しかも一枚二枚の厚さでなく何枚も重ねて貼ってあるので、紙自体が壁の役割をしているようだ。ただ、私の地形図が貼られたのは最近のはずだから、仔細...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第65話「ドクタードントウォーリイ」

そのぐるぐる巻きの猿ぐつわの管理人を解放すれば事情はすぐに分かるのであろうが、どうもその男の人相が良くない。そう思って躊躇して、建物の陰から彼の様子を窺っていると、猿轡が自ずとハラリと解けて、大声で叫ぶのかと思いきや、自分でまた縛り直したの...