オッドアイ・Tの猫とその一味

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オッドアイTの猫とその一味第99話「茜色のだぶだぶ」

私が手紙を受け取って読む間、鼻黒郵便夫は傍らに立っていました。読み終えて彼を見ると着払いだと言うのです。私は小屋の裏に行ってカニ券を探し採ってきて渡しました。鼻黒郵便夫は表と裏と二度ずつ見て、それから目を丸くして驚き、よだれを垂らしました。...
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オッドアイTの猫とその一味第98話「汚いだぶだぶ」

だぶだぶのぬいぐるみを着たようにだらしなく太り、掘ったばかりのさつまいものように汚い猫が出現するようになりました。鼻黒鼻白種も太ってはいますが、こんなではなく、きれいではないですが、こんなに汚くはない。こんなに太っている訳は分かりませんが、...
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オッドアイTの猫とその一味第97話「生きている証」

その征平さんが「いつか朳差の小屋の番人になって、夏の間だけでもあそこで過ごしたい」と良く言っていた。その希望は叶わないまま、大熊小屋からの帰り、西俣で滑落死した。もし彼が沢山のしがらみを断ち切って朳差小屋に入ったとしても、元々この小屋は管理...
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オッドアイTの猫とその一味第96話「池塘コーヒー」

「ハリギリハマナスハリエンジュ、ナツメタラノキアリドオシ、サンショウサンザシサルトリイバラ、カラタチサイカチピラカンサス」と唱える者がいた。本人も長く忘れていただろうし、私も猪の存在さえ忘れていたが、長い縦走の終わり、朳差岳を指呼の距離にし...
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オッドアイTの猫とその一味第95話「来世はハワイで」

そこに行けばすべては幻に見える。果たせなかった夢も守れなかった約束も、悔いも怒りも。鼻黒、半猫もそうだろう。水汲みさえしていれば、なにも考えなくて良い。鼻黒は鼻黒のまま、半猫は半猫のまま、そして私は今の私のまま、生きて暮らして何の悔いも無い...
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オッドアイTの猫とその一味第94話「鉾立に到着」

三通目の手紙を読み終えた時に、雲が太陽を隠して谷間に風が吹いた。吹雪になれば鉾立の急坂を登れるのは厄介だ。夏道ならジグザクに登って滑落こそないが、今は硬い雪を直登するしかない。一人が滑ればその後ろが巻き込まれて滑る。5人目が滑れば95人が滑...
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オッドアイTの猫とその一味第93話「猫塚」

Tの病気は脳梗塞です。海岸の病院でリハビリしているそうですが、家に戻ることはないでしょう。だからTの猫はもうTの猫ではないのです。Tの残した物は猫塚しかなくなりました。私の父母が健康で農業をしていた時代、育苗用のビニールハウスが二棟、そこに...
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オッドアイTの猫とその一味第92話「その後の餌係」

二通目の手紙 コロニャン禍で多くの猫が死んでしまい、その猫を埋葬する仕事で成金となったTは今や体を壊して施設に入っています。自分で増やした猫を処分して金を得ることは意図したことではなかったにせよ、自業自得の構図であり、病になったのは、その...
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オッドアイTの猫とその一味第91話「幾通もの埋もれた手紙①」

谷間は幸い晴れ、晴ゆえに雪は硬く締まって掘り出すのに難儀したが、幾体もの半猫郵便夫を掘り出して並べると、さながら彫刻公園で、撫でたり触ったりして鑑賞した。そのうち陽に当たって自然に解凍して、最初に掘り出した半猫郵便夫が私に手紙を渡した。私は...
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オッドアイTの猫とその一味第90話「猫足機能」

雪の降る夜は沢山の夢を見る。ただ、そうでない夜に見る夢同様、朝起きて覚えていることは無い。哀切な夢でさえ、小用の後までに忘れている。たとえそれが前世後世の暗示だとしても、潔く忘れて後悔さえできない。この朝もそうだ。我々は外に出た順に驚きの表...