小学生の頃は花が好きで、庭の一角に自分の花壇を持っていた。大学の時に誘われて始めた登山では、写真の中に沢山の花が写っているのに、その一つさえ名前を知らないで済ませていたようだ。それは初めて朳差に登った時に、タカネナデシコを高山植物だとは思えず、誰かが植えた園芸種だと思ったことからも推測がつく。山登りを続けているうちに花の名前だけは覚えた。三つ子の魂の残滓なのかもしれない。最初は刺繍の缶バッチ。売られている場所、店で値段は違うが、安ければ400円しないし、高くても600円位。その値段制限の中で、刺繍という手段で、花それぞれの特徴を出していると感心する。これは日本の賃金ではできないから、東南アジアの片田舎の貧しい家庭で作られたものであろう。母親は一日16時間掛かって10個、学校にも行けない娘は5個で計15個、週一回、缶バッジの道具と材料を提供している仲買人が来て、一個10円、合計105個、合計1,050円。コマクサの葉の繊細さはどうだ。彼らは本物を知らないまま生まれた土地で生きていくしかないのである。