顔の彫りが深く、年中浅黒い顔をした征平さんを、口にはしないが誰しも純粋な日本人だと思っていなかったのである。公民館に顔を出したELTの外国人教師が彼が帰った後で「あの人、どこの国の、人、ですか。インドから、来ましたか、パプアニューギニアから来ましたか」と外国人ならではの遠慮のなさで率直な質問をしたものである。私にも否定する根拠はなかったが、白馬に登る予定で訪れた蓮華温泉の露天風呂で彼の裸体を初めて見て驚いた。黒いのは顔ばかりで、他は文句なく白い。つまり年中黒い顔は長年の山屋生活で抜けようにも抜けない日焼けの黒さだったのである。その後彼の名誉のために、この目撃談は機会あるごとに話して、異邦人説を覆すよう努めたものである。
2009年阿賀北山岳会山行写真