オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第54話「焚き木を拾いながら」

起伏する稜線を覆う草原と残雪、そこに刻まれた一本の細い登山道を進む一行   。私は距離を詰めて一人ひとりを確認した。先頭はオレンジのシャツ、棒を振り回すのはY似で猪使いの巫女。次に猪、その後に郵便夫、それから猪、そして郵便夫。つまり猪が増え...
今日の風景

Fさんの太鼓判

先月の十五日に父が死んで、今週の日曜日に四十九日の法事になる。肉親を失くすのは36年前、一月に祖母、そのひと月後に祖父と死んで、それ以来のこと。大学を卒業して塾に勤めて、そんな冬だった。その時の塾長、H先生は音信の度、父母の様子を気にしてく...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第53話「能天気が一番」

私はY似で猪使いの巫女を起こさないように、静かに、そして速やかに五人分の朝食を準備した。猪が串刺しの丸焼きになって、Y似で猪使いの巫女の朝食となるのを避けるためである。食事といってもお湯を沸かしてアルファー米(乾燥した米)の入った袋に入れる...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイ Tの猫とその一味第52話「梅花皮小屋にて」

北股からの下りこそ軽率な輩は要注意である。左は急な崖になっていて、べろっとしていれば容易に滑落する。奈落の底のように見える石転びの雪渓まで落ちて、そこから今度は45度の斜度の雪渓を転がり落ちる。石転びの出会いに憚る大石にぶつかってバウンドし...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第51話「もっこりの秘密」

門内小屋の二階の窓から双眼鏡で我々を見ている者がいたが、近づくといなくなった。小屋の重い扉を開いた時に、玄関に立って迎えたのはその男だ。   「門内小屋にようこそ」 首から双眼鏡をぶら下げた男は言った。飯豊の小屋の管理人の...
雲の湧く稜線に

五頭山 2018/1/8(訂正)

山行履歴の2018/1/8の五頭山が翌年2019/1/6の五頭と間違って張り付けていたので訂正してここに載せます。2018年は晴天、2019年はガスって二ノ峰止まりでした。 7:54 駐車場発8:24三ノ峰登山口発10:42三ノ峰  ...
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オッド・アイ Tの猫とその一味第50話「歌を歌えば」

重荷だったスコップがなくなったせいか、あるいは花輪が頗る気に入ったのか、ホリデーはいい気になってずんずん歩いた。関川村の方言でこういう状態を「いさる」という。いさって鼻が私の足にぶつかる時もあるので、次の休憩の時にザックからスリング(短いロ...
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オッド・アイTの猫とその一味第49話「素敵な首飾り」

管理人とはおそらくK氏だろう。郵便夫が話す風貌と一致する。「山遊亀」の著者で、阿賀北総ての三角点を詳らかに踏査した山屋だ。そのK氏に郵便夫は置手紙を書いた。 「おせわになりました。たくさんたべました。たくさんねました。とてもげんきにな...
オッドアイ・Tの猫とその一味

オッド・アイTの猫とその一味第48話「旅は道連れ」

朳差という桃源郷で唯一不足なことは風呂がないことだ。一生涯風呂に入らず、最も不潔と思われたホリデイは水汲みの度に水場に落ちるので、むしろ最も衛生的だ。ホリデイ以外、七月とはいえ冷たい水場に進んで入ることは無理だ。だから驟雨が来た時に小屋の中...
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オッド・アイTの猫とその一味第47話「新しい仲間ホリディ」

雪の中の郵便夫は雪が解けるまで見つからない。そんな犠牲が無くては七月が来なくて、ヒメサユリも咲かないのだろう。そんな気がした。 私は朳差岳に登りながら振り返り振り返りして、小屋をあとにするY似で猪使いの巫女を見送った。もしかすると、と...