オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第88話「半猫金目銀目」 T学芸員も私も大きな声を出すほど2億円に驚き、その行方に関心を持った。そして、その日から三色毛皮婦人が来なくなったところまでが前回の話である。 「会場使用料が1%としても200万円です」と言ってT学芸員はまた声を上げて驚いた。当館の年... 2025.07.01 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第87話「アートブックダイエット」後半の① 小屋から出てきた亀川さんは私に二枚の紙を渡した。一枚は預かり証で「人間一体(毛)。生き返ったらすぐ下山して医者に診てもらうこと。生き返らなかった寝袋として当山小屋で使用」。もう一つは手紙であった。 「学芸員の彼女が素っ頓狂な声を出して私に... 2025.06.02 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第86話「屋根で干す」 半端な人間がその本人でさえ処し難いように、感電した半黒半猫も担ぎにくい。感電のせいか毛の一本一本がピンと立ってヤマアラシのようになってとても痛いし、逆に体はぐにゃぐにゃでずり落ちてくる。とげとげのぐにゃぐにゃを何度も草地に落としては担ぎ直し... 2025.05.27 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第85話「頼母木山での災難」 手紙はここで終わり「後編は頼母木小屋に郵送します。半猫郵便夫が来たら」とあったので、Tさんがどんな素っ頓狂な声を出したのかと思いながら道を進んだ。そしてまた、こうした話を物語に挿入することが読み手にとって有益なことなのか、とも考えた。しかし... 2025.05.09 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第84話「アートブックダイエット」前半 登山用語でアルバイトというのは、道を間違えたり迷ったりして余計な時間を費やすことです。思い切って言ってしまえば、この小説自体がアルバイトなので、アルバイトに更にアルバイトをしても何の不都合も生じません。ですので、門内の小屋で私が受け取った二... 2025.04.24 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第83話「エスケープルートは3本」 私のそんな様子をしっかり見ている者がいた。双眼鏡師である。往路我々がこの小屋に近づくのを見ていた同じ二階から私を見ていた。 「私はここに残ります。下界に戻ってコロニャに罹かって死ぬのは嫌なので」 さすが双眼鏡師、私が広げた手紙ま... 2025.04.07 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第82話「コロニャンと金満家」 北股の急斜面の、深く掘れたジグザクの道を下るとギルダ原、飯豊に咲く花のすべての種類がここに咲く。花に関心のあるものは立ち止まり、膝を突いて眺めずにいられないし、そうでなかったとしても「きれいだ、美しい」と感嘆して前に進めない。 「この小さ... 2025.02.24 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第81話「ちぎれるほど手を振る」の巻 私らは手がこんななんで乾杯できないのが残念です。バケツから頭を出して猪は言った。 「うまいです。うまいです。乾杯できなくてもうまいです。でも昔はもっとうまかった気がします。きっともっとうまかったです」 「賞味期限が切れているからかもしれ... 2025.01.30 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第80話「飯豊のコマクサ」 コロニャのおかげでTが一時的に金満家となったとしても、やがて元の木阿弥、少しでも商才があれば自分の家をコロニャ病院にして全国の愛猫家から永続的に埋葬料を徴収することもできるだろうがと、彼の将来を危ぶんだ。昨年兄が死に母が続けざまに死んで、今... 2025.01.22 オッドアイ・Tの猫とその一味
オッドアイ・Tの猫とその一味 オッドアイTの猫とその一味第79話「コロニャの蔓延」 「そうですそうそうその通り、昔は立派な双眼鏡師だったのですが、器用貧乏というか、なんでも器用にできるので、一つのことに専念できず、今は見えるものも見えなくなってこんな感じです」そう言って一通の手紙を自由になったSさんは私に渡した。放浪する半... 2025.01.21 オッドアイ・Tの猫とその一味